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【映画】クレアモントホテル

 … しみじみとしたよい映画にまた出会えました。

 クレアモント・ホテル という、ロンドンのホテルに長期滞在する老女と、ひょんなことからその老女と知り合った、若き作家志望の男性のストーリーです。

 老女は、いくつかのトランクを持って、ロンドンのクレアモントホテルに到着しました。とりあえず1か月の滞在予定です。広告で”料理が自慢”と書いてあり、とても素敵そうに思えたホテルでしたが、到着してみると、自分が思っていたのとはずいぶん違うホテルでした。 

 さびしげなフロント。よたよたしたホテルマン。旧式のエレベーター。案内された部屋は狭くて、ベッドと小さな机と箪笥と、それからとびきり小さなテレビ(しかもポンとおいてある感じ)だけ。バスルームは廊下を歩いていかないといけなくて、カーテンをあけてみると、窓の外は隣の建物の壁と屋根。…およそ、初めてのホテルの部屋に入ってがっかりするすべての要件をカバーしているようなオープニングでした。

 さらに、夕食の時間に、”第一印象が大事”とドレスアップして食堂に降りたものの、食堂で食べている人たちは、そんなにドレスアップしているわけでなく、雑誌を読みながらだったりで、ほとんどの人がひとりで黙々とディナーにむかっています。

 サービスされた食事は、たぶんとても冷めていて、たぶんとても美味しくなくて。…

外国でそこそこに裕福なシニアのかたというのは、ホテルでこんなすごしかたをされるのでしょうか。私のようなものには考えられない贅沢でちょっとびっくりしました。でも、一人でずっと過ごすホテルは退屈なようです。そこに同じようにいるかたとのおしゃべりも、いつ来てくれるかもわからない孫のことなどの話ではネタがつきてしまいます。スクラブルのようなボードゲームとワーズワースの詩集で過ぎていくには時間が長すぎます。

 そんなときにめぐりあったのが、作家志望の若い青年でした。ポストに郵便を投かんしにいったときにこけてしまった老女を、そのそばの地下にある自分の部屋かたみかけた青年は、彼女を自分の部屋に招き、けがの処置をしてあげます。そして、”ちっとも連絡をくれないロンドンにいる孫息子”になりかわって、青年が老女のいるホテルでディナーを共にする約束までするのです。そして、青年と老女の交流がはじまります。

 美男子?の青年がディナーにあらわれ、ホテルの滞在者の注目の的となっていくシーンはとても興味深いものでした。青年は老女のことを小説に書こうとしていきます。そして、青年、老女ともに抱えているさまざまな想いがだんだんと描かれていくのです。

 老女がいくら連絡してもなしのつぶてだった本物の孫息子がホテルを訪れるシーンがあるのですが、老女は、”美男子の青年”を孫息子として紹介しているために、本物の孫息子が突然来たときには大慌て。そして、ホテルの人たちも、本物の孫息子のほうを、まさか”ホンモノ”とは思わず…。 また、ホテルの人たちの中で、淡い想いも芽生えますし、どうしても避けて通れない病、そして人生の幕が閉じられるときともむきあっていきます。 

 家族の諸問題他、いろいろなことを深く巧みに内蔵した作品でした。 

 巧みなユーモアを随所に感じる、しっとりとじっくりと魅せられます。

 … 少なくとも週1本は、レンタルDVDで映画を見ることと、電車・バスの中では小説を読むこと(書類は読まない)… が、この秋の自分の目標?です。 要領が悪いもので、時間の使いかたが下手でとほほな日々をなんとか…と思ってのことなのですが、読書のほうは、早くも頓挫。時間不足で、交通機関の中では”読まないといけないもの”を読むか、爆睡してしまっているのですが、映画をみるほうは、今週もこの作品と、もうひとつよい作品を見ることができて、嬉しいです。ちなみに、もう一本は、”リメンバー・ミー”という、大事な人(母親、兄)を不幸なできごとで亡くし、心に傷を持つ男女がめぐりあって… という大事な人の死との向き合い方の映画でしたが、この映画はネタバレなしに感想を書くことがとても難しくて、ここでは書きません。が、こちらもぜひ…とおすすめします。ああ、このあとあれが起こってしまうに違いない…と、どきどきして息がつまるような終盤のシーンのあと、それでもなおポジティブな気持ちをもって終えていけるのがこの映画のすごいところだと思いました。

 ところで、クレアモントホテル…は、ホテルライフムービー?としても興味深いものでした。 その昔、ツアーでヨーロッパなどをまわったときには、どこも1、2泊で、次々に移動して、スーツケースから取り出すのは翌日に着る衣装などだけ。スーツケースをあけるメインの理由は買ってきたおみやげを入れること…だったのですが、近年でかけるときは、どこかに数泊する…というようになりました。たとえば今年はリオで同じホテルに6泊。ドレスデンでは、最初のホテルに5泊。それくらいいられると、到着したらまず、スーツケースの中から、服をクローゼットに移すことになります。(しわのばしも含めて…) 備え付けのハンガーはほとんど全部使って、それでも足りないのでたいてい日本からも持参。ひきだしにもセーター類ほかを入れていきます。 机の上にもPC関連のもの、化粧品、お菓子ほか…いっぱいだして。

そうすると、なんだかホテルの部屋が自分の部屋?に近い気がしてくるのです。もう今はどこにも出かける予定はないのですが、もーし、もーし、先でまたどこかに行けるとしたら、くるくるとホテルを変わる旅よりも、どこか一か所に居られるたびにしたいなぁと、この前の旅行の間も、またこの映画をみてからも思いました。人生短いので、できるだけあちこちをまわろう!というのもまた旅であり、人生短いので、どれだけ頑張っても全部はまわりきれない。それからば、どこかをゆっくりみよう♪ というのもまた旅かなと。

そんな点でも、この映画、自分にはあっていると思いました。

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 おまけの写真はこの前泊まったホテルです。デスクがちょっと変わっていて、三角形の部屋の角をとても上手に利用できていると思いました。

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