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【読書】悪女について

 

 

 …(ある本の感想です。最初にアップしたものから。少し加筆しました。まだきちんと書ききれていない気がしています。書ききれないと誤解されそうで怖いのですが、ネタバレなしに書くのは難しいです…)…

少し前の皆既月食といい、このところ、冬は陽が暮れるのが早いので月を見上げることが増えました。同じ時間に帰宅しても、夏ではまだ明るいのに冬には、月や星が見えます。

 月をみあげて帰りながら、よく思い出すのが、中島みゆきさんの”悪女”という曲です。月夜は素直になりすぎるから、悪女にはなれない… という歌の情景を思います。悪女ってどういうものなのでしょう…。

 

 新年のおみくじ?がきっかけで、有吉佐和子氏著の”悪女について”を読みました。神様の声には素直に耳をかたむけ、書店で即購入したわけですが、神様の声に従うのはよきことです。惹きこまれて、ずっと電車の中でも読み続け、夜更かしして読み終えてしまいました。

 まず、この本のお話をさらっと書かせていただきます。

 富小路公子なる女性が、ビルの7階から転落して亡くなりました。テレビのワイドショー?などにも登場する有名な女性実業家であっただけに、週刊誌などが、彼女の隠された過去、男性関係ほかの私生活を書きたてていくという中で、27人の彼女に実際にかかわった人に話をきいていき、彼女の人生を紡ぎだしていくというものです。

 彼女にかかわりある人々が、様々な立場から彼女の思い出をかたります。出生の秘密(自分は出生に秘密があり、育ての親である八百屋さんの夫婦にもらわれて、育ったと公子はいろいろな人に語ります。)、そして夜学で簿記を学び、生きていく力をつけ、実業家になっていく様子、彼女の婚姻関係、二人の息子の父親は誰かなどが、彼女の幼馴染、同級生、親、恋人、使用人ほかいろいろな立場から語られます。

 

 公子自身の言葉では何一つ語られず(文字通り死人に口なしなのでしょう。)一人称で語られるお話から、公子の人生がどんどん浮かび上がり、浮かび上がったと思うとまた謎が増え、その謎がまた他の人のお話から、解き明かされ… というとても秀逸なミステリーでもあると思いました。 タイトルがタイトルですので、なかなか手が出しにくい?本かもしれませんが、いろいろなかたにおすすめしたいと思います。一人の人生が27の視点から別々に語られたように、読後感もまた、それぞれのかたで違うと思います。

 それで、以下はあくまでも一人の読者の感想…です。(しかも、アップして読み直してみて、未読のかたにはとてもわかりにくい内容だと思いました。すみません。)

 読み終わってまず思ったのは、”この女性は悪女?”ということでした。

 

 そもそも悪女ってどういう人なのだろう…と考えさせられました。そして、それは考えれば考えるほど、おもしろく深い命題でした。

 もちろん、生きている間に、何一つ悪いことをしない人間…ということはたぶんありえないことで、ましてや、事業も成功させ、謎めいた出生の息子二人の母親でもある公子の人生には、その言葉の中で嘘も偽りもあったでしょう。が、それでもなお、公子は”悪女”だったのか? どうか…。

 事業で詐欺まがい?のこともしているかもしれません。…本の中では宝石のすりかえ疑惑などが描かれるのですが、これとて、”いやそれでももしかしたらそれは…?”という”いいがかりかも”と思えるところを残しながら書かれているところは実にこの作者のすごいところだと思います…。そして、もしも詐欺などビジネス上のことをしていたとしても、それは”悪人”であって、”悪女”ではない気がするのです。

 しかも、そこであげられている”だまされた(かもしれない)”人側にも明らかな非があるわけで。 ”それは、あなたのほうが悪いでしょ”… と思わず思いながら読んだりしたところもありました。 それだけ、一読者を味方につけてしまう公子 はすごいのかもしれません。が、それでもなお、そのことをして”悪女”ではないでしょう。

 また、男性関係にしても、公子のことを決して悪く語らない男性たちの証言がいくつもあります。そんな言葉を読んでいますと、少なくとも公子は、その男性たちにとっては”悪女”ではなくて、むしろ”天女”ですらある気がしました。

 

 ネタバレになりますので、具体的にとても書きにくいのですが、総じて、27人の証言から一度もあったことがない女性の人生を考えると、”ただ幸せになりたくて努力していただけであり、その一生懸命さが幾多の人を惹きつけ、またそれらの人に彼女なりに鏡のように向き合っていただけ”… のような気がするのです。

…鏡のような… というのは、優しい気持ちの人にはそのままに優しい気持ちで。心に邪念のある人には、その邪念に応じるようにと。

 婚姻にまつわる件、子どもを出産したときのことは、尋常でない行動なので、これをして”悪女”というのかもしれません。”貞操”という観念からですと、公子はとんでもない女性…なのだと思います。が、でも、あえてここも彼女の弁護側に立つとしましたら、”産む性”である女性という立場、家柄ほかで結婚を認められにくい(ましてこの本が書かれたころは)社会の因習ほかがベースにあります。 そこには眼をつぶって、”とんでもない女”のひとことで言うには、片手落ちなのかもと思いました。… もちろん初めての子の出産のときの産院からの連絡ほかには、目が点になりましたが。

 

 公子がテレビ出演するときのことをテレビ局の人が語っていたところがあります。最初に読んだときには、へぇぇ…(呆れ)という感じで読むだけだったのですが、後で思いなおすと、ここに、この本のいろいろなことが凝集されているように思いました。テレビ局側が求めているシナリオ通りの動き?に、本番で・・・・という行動から、公子のいろいろなことが凝集されているように思えるのです。(ネタバレになりますので、ここはごにょごにょと) 

 … そもそも彼女が”悪女”であるかどうかは、彼女に直接かかわっていない人にとっては、とやかくいうことではないはずのこと。週刊誌にしても、インタビューアーにしても、作家にしても、読者にしても …。

 もしも、作者がこの本に”悪女について”というタイトルではなくて、”或る女性の生涯”というタイトルにでもしていましたら、読者それぞれがこの女性について別の称号?をつけて読んでいたかもしれません。 ”悪女”というのは、作者から刷り込まれた印象にすぎないのかもという気がしてきました。

 

 … でも、これから、お読みになられるかたは、まずはしっかり”悪女について”というタイトルからスタートされて、この本の世界にたっぷり入りこまれますようにとお願い申し上げます。そうでないと、私は、この小説を楽しむある面を奪ってしまったという意味で”悪女”ということになりますから。 

 

 ”悪女”って、なんでしょう…。

 その女性とのかかわりがなく、またたとえあったとしても、何の”得”も受けられなかった人が、自分の人生とは違うタイプの、一生懸命に生きることで輝いた女性の人生を羨んでいう言葉だとしたら、”悪女”というのは勲章のような言葉なのかもしれません。 

 また、たとえ週刊誌的に”悪女”と言われる女性であっても、その女性とつきあった男性で、彼女との幸せな思い出をキープしている男性にとっては(この本の中にも複数でてきますが)、たとえ周囲が何を言おうと、彼女は天女なのでしょう。

 公子と関わった男性らの言葉には、彼女への慈愛を感じる人がいます。が、その一方でこの本で、ちょっと気になったのが、公子とつきあった男性には、強烈な個性を持っているようなタイプの男性がいなかった点です。

 それだけに、この本は、どちらかというと普通の男性が、ほんの少し??勇気をふりしぼって???、素敵だなぁという女性にアプローチして、その女性が、その男性の心に彼女なりにできる方法で精一杯こたえようとしたお話?という気さえもするのです。

 スウェーデンのことわざに”勇気ある男の子だけが美女とキスができる”というものがあります。”普通の男の子が、勇気をふりしぼってキスをして、それに女の子が微笑んだ”。… 光景が、なんとなく自分の中の読後の残影としてあるのです。 

 

 つきぬほどいろいろな想いが沸き起こる本で、うまくまとめられないままに書いていますが、新年早々にこういう本にであえたことに感謝し、おみくじを”大吉”と思いたいです。

 ところで、”悪男(あくだん?)について”…という本があれば読んでみたくなりました。

 … ”悪女”(あくじょ)と”悪人”(あくにん)は違うと思います。

 (あくだん)と(あくにん)はもちろん違います。”悪男”という言葉はきいたことがないのですが、”悪男”とはいかなる人なのでしょう?。  ”悪男”の中には、時に歴史上では”英雄”と言われている人もいるのかも。

 

 ”悪男”とはいかなるタイプか…。次なる命題?です。 ふーみゅ。 

 

 

 

 

 

 

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