« あの作家のこの一作<無影燈> | トップページ | 【映画】ダブリンの街角で 他 »

【映画】ブラック・スワン

 決して、”なにげなく”でかけてはいけなかった映画に、”なにげなく”でかけてしまいました。

 「ブラックスワン」です。

 ある会合の最後に、チェアマンから、”ところで、みなさん、ブラックスワン… これはぜひ。”と言われました。半ば、次回の会合までの宿題?のようなニュアンスでいわれたことと、芸術と文化に精通しておいでのすてきなかたの言葉に、ぴょんととびついて、見にでかけてしまったのですが、身構えかたが足りなかったのか、ほとんど雷にうたれたような状況で、上映後に、席を立つことになりました。もっとも身構えて行っても、あれほどのものの中では、きっと五十歩百歩の衝撃だった(→私にしては) と思うのですが。

 バレエ、”白鳥の湖”で、メインの座をめざすニナ(ナタリー・ポートマン…この映画でアカデミー主演女優賞をとったのも納得)は、練習熱心で、常に完璧をめざし、美しき”白鳥”の部分であれば見事に踊れるのですが、より深層心理も入り込む”黒鳥”の部分となると、表現しきれません。

 芸術監督ルロア(ヴァンサン・カッセル)は、そういう彼女の部分を見ぬき、彼女にある宿題をあたえたりします。彼女のポジションをあやうくするように、”黒鳥”の部分を魅力的に演じるリリーなるダンサーの存在や、自分に夢をかける元バレリーナの母親の存在ほか、ニナをおびやかすものは大きく、ニナは徐々に狂気と正気の間を混乱していきます。

 そして… (続きは映画をご覧ください…)

 ストーリー的には、そんなに奇想天外でもなく、また、どこまでが現実でどこからが妄想なのかの区別がわからなくなるため、文字でこの映画のことを書こうとすると難しいのですが、実際に映像としてみると、”この映画を鑑賞した…ということが記憶に残る”映画だと思います。久々に凄い映画にであってしまったというのが、一番に思うところでした。

 自分の中に、何かしらの白は持ち、でも黒も持つべきであると思い、でもその黒を得る手段、ある壁を超える手段がわからずに壁の前で途方にくれているような人にとっては、まるでぐさっとナイフを胸につきたてられるような映画であるかもしれません。

 映画の中で、たぶんR15の所以になってしまったのであろうセクシャルな描写が、その”壁打破のための例”としてでてきますが、ここでそういう想定が使われたのは、あくまでも映像として表現するための例…であって、その部分は、人により、それぞれだろうと思いました。”新規開拓営業ができない””人にNOが言えない”… いろいろな壁はひとそれぞれだとおもいますので。

 逆に、そういう壁の前でのもがきのない人には、この映画はどういうふうに響くのだろうかと考え(印象がまったく違うでしょう…)、この映画が、多くの人に評価されるとしたら、それだけ、”壁の前でたたずむ”人が多いということだろう…と考えました。

 ナタリー・ポートマンさんの演技は素晴らしかったです。

 それに、セリフや出番はそんなに多くはないのですが、演技監督ルロアの登場シーンは、ひとつひとつにすごい役割があり、そのセリフ、その演技の密度の濃さは、鑑賞後にため息がでるほどでした。 あるひとつのセリフなどは、思わず手帳に書かずにはいられず、たぶん、これから先、何かにつけて自分でそれを見てしまいそうです。 

 私には、まるでナイフで突き刺されたような気がする作品でした。

 なにか越えたくても越えられない壁をお持ちの皆様へおすすめします。

 ただし、心して、ひとりでおでかけを…と、おすすめします。

 

 <鑑賞されたかたへ>

 エンドロールのところの羽の色、いかがご覧になられたでしょう。

 私はあの羽の色があれであったことにほっとしたのですが。

 誰かと映画のあとに、感想をお話するとしたら、この点を…と思いました。

 

|

« あの作家のこの一作<無影燈> | トップページ | 【映画】ダブリンの街角で 他 »