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あの作家のこの一作<無影燈>

…先日、知人と話している中で、”この作家が好き♪と思うと、だーっとその作家の本を読んでしまい、また新刊にも手をだしていくけれど、だんだん作風が変わって、自分にあわなくなって離れてしまうケースもある”ということがでました。

 あたりまえといえばとてもあたりまえのおはなしです。

 その時に、一番に思い浮かべたのは、私の場合は渡辺淳一さんでした。

 ずーっと昔は、このかたの作品が好きで、特に「花埋み」「白き旅立ち」のような、伝記や歴史に医学をからめたような作品が好きでした。でも、あるころから、なんだかついていけない描写とかストーリーの作品に変わっていって、いつのまにか遠ざかってしまっていました。

 でも、今でも忘れられない一作というのがありまして、先日の知人とのトーク以来、その本のことをぼーっと思い出しています。「無影燈」という作品です。

 あるとてもニヒルな医師と、彼が務める病院の看護師とのことを軸に、医療問題へのなげかけなどが盛り込まれている北の地のストーリーです。 特に最後のほうのほうの描写が忘れられず、それをこれから読む方へはネタバレなしに味わっていただきたいため、内容はとても紹介しにくいですが。

 あの本を読んだ20代はじめのころには、わかっているようなつもりで、わかっていなかったかもしれず、それでもそのままに惹かれました。(大人の世界?への憧れなのかも)

 そして、今でもよくわからない…のですが、”大人の恋愛”というものがあるとしたらきっとこういうものなのだろう… と、思います。

 何人もの女性と関係を持つ主人公の直江医師は、(本当はそういうプレイボーイ?キャラは苦手なはずですのに)言葉にうまくあらわせない魅力のあるキャラです。こんなかたと、ホテルのラウンジで偶然横に隣り合わせて、1時間くらいお話ができたらきっと素敵だろうなぁ… (きゃっ…♪… と書いてしまう段階で私と、”大人の恋愛”の距離を感じてしまいますが。) と思います。

 ときおりふっと彼が見せる優しさというのが、限りなく優しく、その一瞬があるからこそ…彼のキャラを作中人物らは許し、また読者も受け入れてしまえるのだと思います。

 あるプレイボーイで有名な芸術家の人が、”あとくされなく女性と別れるには、とにかく一瞬でもいいから、限りない優しさの記憶をインプットさせることだ”…と語られている記事をずっと以前に見かけたとき、とっさにこの直江医師のことを思い出しました。

 そして、彼を愛した倫子の、彼の受け止め方はまた、まさに男性にとって理想?の、大人の女性のありかたなのでしょう。 私には彼女のキャラもとても惹かれるキャラで、ゆえにこの二人のことが忘れられず、この作品の記憶につながっています。

 ”嘘”はすべて許せないというのが若さゆえのピュアさだとしたら、”優しい嘘”を、それを嘘だとわかりながら、その嘘をつくという優しさを、心にとめおきたいと思うのが大人? … 

 

 …実は昨秋、ふらっと札幌にでかけた時に、札幌グランドホテルを宿泊先に選んだのは、この本の中に出てくるホテルの記憶としてあったからです。

 でも、その時も、そして今回知人と話にでたあとも、実はこの本を読み返しできないでいます。本棚に(いつか引っ越しがあって、ほかの本は荷物になるから処分するとしても、この本棚の本だけは最優先で持っていく…という本棚)ちゃんとそこにあるのは、背表紙を見て確認しているのですが…。なんだか記憶の中での本をそのままにしておきたくて。

 生涯にわたり、ずっとたくさん書き続けるということは大変なことで、良作ばかりではなく時にはそうでないものもできてしまうのでしょう。でも、こんなふうに誰かの記憶に残るような一作を書ける作家さんというのは、やはり素敵だと思います。

 ということで、大人の恋愛を考えて御覧になられたいかた。あの作家。なんだか○な…と思われているかもしれないかたに、この本は、”あの作家のこの一作!”として、おすすめしたいと思います。 もっとも、読み返していない(したくない…)ため、記憶の中で美化されすぎてしまっているかもしれませんが。 

 

 … 実は今、たのまれごとがあって、自分の人生の振り返りをしているところです。

 それを今度若いかたの前でお話しないといけなくて、お引き受けしたものの、ああ、私はなんと恥じ多いものを引き受けてしまったのだろう… とじたばた悩んでおります。

 もちろんそれは、恋云々のお話ではなくて、池でおぼれかけてもがいている猫カキ?人生のお話で、カッコ悪いことこの上なし、さらにそれをPPTでだなんて最悪です。(とほ。)

 もう人生の残り時間のほうがはるかに短くなってきていると感じますと、自分の人生の中で、何があったのか、何がなかったのかを思わずにはいられません。

 遠い目で記憶の先をみるばかりです。

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