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【読書】利休にたずねよ

 茶人、千利休。豊臣秀吉によって自害を命じられた彼の最後の一日を中心に、彼とそのまわりに人の時間と想いを、みごととしか言いようのない構成で語れぬく小説… ”利休にたずねよ”(山本兼一氏著 PHP文芸文庫) を読みました。 

 旅に持参した何冊かの本のうち、結局、読むことができたのはこの一冊だけでしたが(存外に時間がないものです…)この一冊でまずはよかったという充足感を得られました。

 圧倒的な審美眼で、粋を極め、結局それが天下人秀吉の嫉妬をかうことになり、自らの美学をつらぬくことで、生を極めた利休の人生の底流に、深く、鋭く、哀しくある、ある女性との記憶… それがいかなるものなのかという気持ちをいやがおうにも読者に与え、昂じさせ、清流をもって終盤まで押し運ぶようなみごとな作品でした。

 ただ、そのたかまりが大きいだけに、読み終わったあとに少しだけ、”え…” ともっと期待したいところが残ったのは、贅沢すぎる作品ゆえか、それとも侘び寂びの極致にいたらず、貪欲なりし我が心ゆえなのか…。

 よい本です。未読のかたにはおすすめします。ただ、最後の解説は読まれないほうがすっきりされるかも。 なんだか美の極致を読んだあとにはがっかりしてしまうものでありました。

 音楽の世界で”絶対音感”というものがあるとよく言われますが、美の世界でも”絶対美感”というものがあるのではないかと思います。たとえば、黄金比といわれるものなどはそれを数値化したものでありますが。

 美を極めると、それから少しずれる…ものに心の落ち着かなさのようなものを抱いてしまうのでしょう。 秀吉もまた、程度の差こそあれそれを知っていたように思います。だからこそ、自分よりもさらにすぐれたものをもつ利休に嫉妬したのだと。

 この本を読んで少し、秀吉を見直す気にさえなりました。

 ”あなたたち、いい恋をしなさいね。”… 何度かここに書いたと思うのですが、高校時代の恩師が、高校入学直後の授業で言われた言葉がまた蘇ります。

 利休はまさによい恋をしたのだと。

 いかに想うか。

 いかに想われるか。

 人生の中でいかにそれらのこと、そんな時間が貴重なものであるかを、しみじみと思いながら、途中、何度も想いが本から他へゆらぎながら、読み終えました。

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