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2009年9月

【映画】愛を読むひと

 …夏前に公開になったのですが、とうとう映画館に行くことができないまま公開終了で、とても残念に思っていた映画「愛を読むひと」をあるかたのご厚意で、うちで、鑑賞することができました。原作の「朗読者」を読んで、ぜひこれは見たいと思っていた作品でした。

 でも、鑑賞後最初に思ったことは、「ああ、映画館で観なくてよかった…」。

 久々に、号泣してしまいました。ひとりで観ていて、自分で恥ずかしくなるほどに。原作も心にせまり、いっきに読んでしまいましたが、その原作の良さが損なわれることなく描かれていて、また映像ならではの展開の妙もあり、時系列、場面の切り替えなどがとてもみごとでした。

 ものがたりは、少年と、少年が出会った20歳以上年上の女性とのものです。あることから出会ったふたりは、やがて少年にとってめくるめく時を共有する状況になり、さらにその女性の願いで、少年は、愛をかわす前に毎回、彼女に本を読んであげる…という習慣ができていきます。ただ、そういう時も永遠ではなく、女性は突然少年の前からさり、次にあったときには、彼女の辛い過去をあばく裁きがありました。ナチスドイツ関係で厳しい罪に問われた彼女にとっては、彼女自身のある秘密を守ることのほうが、厳罰に処されるよりもよかったのです。そして、その彼女の秘密とは…

 (これから本を読まれるかたのためにも、映画をご覧になられるかたのためにもネタバレにはしたくないので、ストーリーにからむところはこれくらいで。)

 主人公の女性を演じているケイト・ウィンスレットさんの演技が素晴らしく、若いころから、老いたときまで(このときのメークが素晴らしかったです)その表情にも圧倒されました。手は、もしかして、”手タレ?”さんという別のかたかもと思ったのですが、本当にこんなふうに表情が生きている映画を久々に観た気がします。

 この映画は、反応したくなるところがとても多くて、たとえば法廷シーンにしても、書き出すときりがなくなりそうです。あえて、一番心に去来したポイントだけを書きますと、主人公の女性が感じ得た幸せ、そして味わった失望…が、とてもよくわかったということです。

 長く、ステディに、遠くからでも、気をかけてもらい続けること… そこから得られる安心感と、そういう行為から感じる愛情というのは、ある強さを自分自身が持っている女性にとっては、とても大きな安らぎであり、ありがたさでもあると思います。(絶対的にいつも庇護されていた女性はまた別です。)

 それはたとえていえば、お釈迦様の手の上を飛び回っていただけの孫悟空的存在であることができる安心感とでもいうのでしょうか。

 先日、加賀乙彦氏著の「スケーターワルツ」を読んだときも、この本の主人公である女性スケート選手と、彼女を見守る男性とのあいだに、おなじような感じを抱きました。

 また、少し前に、大原麗子さんがおなくなりになられましたが、このかたが出演されたCMでの忘れられない言葉、“少し愛して、ながーく愛して”…(本当は、”いっぱい愛して、でも表面にでるところは少しでいいの。そして、ずっと愛して。見守っていて… ではないかと勝手に解釈。CMは15秒の時間制限ありですから…)。これともつながる気がしました。

 …ずーっと、ずーっと。どれだけ女性のほうの気持ちにアップダウンがあろうとも、変わらず見守り支えてくれる男性の愛…

 映画の後半で、主人公の女性が感じていたのは、まさにこんな愛だったと思うのですが、それが、あの決定的な場面で、彼女の思いすごしであった…と悟ったときに、彼女の中で、積み上げられていた本が音をたてて崩れ落ちたのだ・・・という気がしました。

 もちろん、また男性のほうの気持ち(不安、ゆらぎ…えとせとら)も痛いほどに伝わってきました。なぜ彼が、あのようなかたちで「読み続けてきたのか」もわかりますし、そしてなぜ彼があのようなアクションをとったのかもまた、わかる気がいたします。

 映画では、それが実によく表情や、また光の加減などで表現されていたと思います。それだけに、本当に特に後半は、こみあげるものをおさえきれませんでした。

 一番心に残ったのは、サイクリング旅行にでかけたときの教会でのワンショットです。後までさまざまなからみとともに残る場面で、みごととしか言いようがありません。教会にさしこむそのやわらかな光もずっと鑑賞後も心に痛みとともに残ります。

 ん… とおなかに力を入れて、泣く覚悟をして、ティッシュペーパーをいっぱい用意して、またあらためて、午後の光が差し込むころに鑑賞してみたいと思っています。

 時間をおいても、ネタばれせずでの感想は書きつくせないと思いましたので、第一回鑑賞の感想だけを…と。知への渇望をこれほどまでに切なく感じたお話はなく。本当はそのあたりで、書きたいことがいっぱいなのですが、ネタばれなしにどう書いてよいのかわからなかったので。 

  本も映画もおすすめせずにはいられない作品でした。

 

 先日、ある女性と恋愛談議になりました。ものすごいイケメンの男性とドラマの一シーンのような激しい恋に落ちるのがいいか、それとも、ちっともロマンチックには程遠い外見、シーンの連続であっても、安定持続可能型であるほうがよいか…と。いわば、 「短くも美しく燃え」か、「すこーし愛して ながーく愛して」か。

 どちらがよいか…。意見がわかれましたが、ひさびさに夢を語り合ってしまいました。そして、終わって声をそろえて言いました。「夢ならば語れる」…。

 

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【ドラマ】BONES

 急に時間貧乏になってきて、またばたばたと過ごしていて、映画に行けず、映画のDVDも見れず…になってきてしまったのですが、そんな日々の癒し?になっているのが、夜寝る前に見る海外ドラマ”BONES”です。

 以前にも書いたかと思いますが、法人類学者テンペランス・ブレナン、骨から科学的に事件を解決していく女性、通称“ボーンズ”と、その相棒で、FBIの特別捜査官を中心に、土壌や昆虫を専門にする大富豪の研究者や、“骨に肉が残っていたら私の領域”という研究者などがいるジェファソニアン研究所で、“骨”から犯罪を解いていく物語です。

 各おはなしの冒頭にまず、“骨”の発見現場と、ひゃい…と思わず身をひいてしまうような骨の状況がでてまいりますし、途中で、またうわぁ…(たとえば、遺体を食べてしまった虫をミキサーに入れてドロドロにして、その後、食べてしまったものの成分分析をするなど…)と思ってしまうところもたびたびでてきますので、そういうものが苦手なかたにはおすすめできませんが、そういうものがとても苦手な私でも、一瞬身をひきながら、シリーズとしては見てしまうのは、私はこのドラマに出てくる主要人物のストーリーが好きだから…だと思います。特に、BONESと呼ばれるブレナン博士のキャラは大好きです。

 シーズン2まで見て、新作明けを待っていたのですが、ようやく準新作?になり、最近は、ウォーキングのついでに一本ずつレンタルしています。今、シーズン3の後半にきています。だいたい、ぼーっと見ているだけなのですが、先日ふっと、キャスティングを見ていましたら、懐かしい名前を見かけてびっくりしました。ライアン・オニールさん… あの”ある愛の詩”のオリバー・バレット4世役ででていた彼が、でているのです。…あ、どうりで、この顔、どこかで見た記憶があると思ったわけだと、ボーンズの父親役さんを見ながら思いました。今後の展開が気になる家族模様の中心人物となっています。

  知人に、BONESを見ながら寝るの…と話しますと、”あんなものを寝る前に見てうなされない?”と言われるのですが、ちっともうなされたりすることもありません。ドラマの進行のあっさり感がきっと自分にあうのだろうと思います。 ちょっと最初は覚悟をしてご覧になってと… おすすめします。

 

ちなみに、「ある愛の詩」は… 愛とは決して後悔しないこと … というせりふと、テーマ曲などが、とても印象的だった映画です。

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【読書】スケーターワルツ

 ”この作家の本を古本屋さんの特価コーナーで見かけたら、本のページをめくることなく買う…” そんなふうに“作家名”で買う作家のかたが、何人か自分の心の中でリストアップされるのですが、そのうちの一人、加賀乙彦さんの「スケーターワルツ」を読みました。

 この本は、半年以上前に、そんなふうにして購入してそのまま書棚に入れていた本です。物語の主人公の大学生美也子は、女子フィギュアスケートの選手。子供のころから厳しいトレーニングを重ねてきました。3回転ジャンプをきめるために、相当の減量をコーチから言い渡されます。いろいろと食事制限をするのですがなかなか成果はでません。とうとう、彼女は思い切った減量法に取り組み、体重はいっきに落ちていくのですが、とうとうそれが行き過ぎて、アノレキシア・ネルヴォーザ… 神経性食思不振症… にいきついてしまいます。

 その彼女の心の葛藤と、その彼女をとりまく人々、特にスマートな、スケートクラブの先輩有田と、彼女に思いを寄せる世界放浪の経歴などを持つ、本の虫の巨漢、長坂という二人の男性とのかかわりが描かれ、物語は非常に読みやすい文体で進んでいきます。

 一度読み始めると、いっきに最後まで読んでしまう本で、ある書評では“(加賀さんの本にしては)軽い”といった声もありましたが、さすがに精神科のドクターだけあって、心のひだのようなものはよく描かれているため、人物造形が明確で、よかったと思います。

 食、とりわけ減量に向き合う人の心のメカニズム?などが、専門的な?内容をわかりやすい言葉で書かれていて、また具体的な食事内容もふんだんに登場し、私は、思わず、ダイエット指南書?のようにも読んでしまいました(とほ)。

 その一方で、久々に本の中の登場人物で、本好きで、自然体であたたかなキャラに出会えて、そんな意味でもその世界に入り込んで読み終えました。 

 “欲望のおもむくままに”…というのもこの本のキーワードです。この言葉だけだと誤解を生じてしまうかもしれませんが、“自然体で生きること”はまたある意味で“古風”に生きることかも…と、ある登場人物の生き方からいろいろと思いがひろがりました。

 スケートにたとえるならば、きっちりした規定演技をのびやかに美しくこなす欲望?なのかもしれません。(←意味不明な表現ですが)

  この本の中で、とても興味深かったのは、読書大好き人間が、蔵書とどうむきあうかというお話です。

 日々読書、読書、読書で過ごす登場人物が、「この世で本当に自分にとって面白いと確信の持てる本なんてほんのわずかですから。5000冊読んだすえに、ぼくが繰り返し読むに値いすると選び出した本はたったの150冊でした」「人類史はじまって以来、世界中の読書人が、そういう自分のための150冊を選り分けてきて、古典というのが暗黙の諒解でできあがった。…」という言葉(そのほか、ぜひ蔵書のことで何か思っておられるかたにはこの本のこの個所を…とおすすめ言葉いっぱいです。あえてここでは書きません。)が、ちょうど本の整理中の自分にずしんときました。

  5000冊は、読んでいないにしても、それでも部屋にあふれる本の中での自分にとっても150冊。棚一つ分。それを今、心の中で選びつつあります。自分の中でその中のさらに10冊にも入るのが、加賀乙彦さんの「宣告(上・下)」です。これは死刑囚をテーマにした重いお話ですが、こういう重い本にせよ、「頭医者青春記」やこの「スケーターワルツ」といったどちらかというといっきに読めてしまう本にしても、この著者の根底にある、人を見つめる視点が好きで、この作家の本は無条件にとりあえず手にしてしまうのだろうと自分で思いました。

 以前は、近くのアイスリンクにプロのフィギュアチームによるアイスショーなどを見にでかけたりしていました。リンクサイドの席ではかなり冷えるのですが、その冷えも思い出しつつ、その一方で、インターバルのときに買い求めた中華がゆの素朴なあたたかさ?を思い出した本でした。

 

 

 ”いとしのセルゲイ”という、フィギュアでペアを組んだ男性と結婚して家庭をもち、その彼が若くして急逝した女子フィギュア選手のエカテリーナ・ゴルデーワさんの本もふっと思い出しました。こちらは、実話で、加賀さんの本とはまったくタイプが違う本ですが、フィギュア選手の日々の生活、想いを等身大?で描いている本で、スケーターワルツを読みながら、思い出してしまっておりました。…この本は、この二人のスケート選手の名前を見て、その美しい演技の記憶から、中も見ずにやはり中古書店のコーナーで買った本です。

  

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