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【読書】劒岳<点の記>

 劒岳<点の記>。公開された映画を見にいきたいと思いながら、週末はそれが叶わず、かわりに、新田次郎氏による原作を買ってきました。

 日露戦争直後。弘法大師をして登りえなかったといわれる前人未到といわれる山、劒岳。そこに地図上の測量点を設置すること、しかも民間にできた山岳登山チームが登るよりも前に登頂を成功させるようにと命じられた測量師、柴崎が、さまざまな困難と闘いながら、山頂をめざしていく実話を描いたものでした。

 自分自身が感情に溺れることがない、淡々とした、しかし心にあるものの熱さは感じられる新田次郎氏らしい筆致は、このストーリーにとてもふさわしく、清冽な行間を感じながら、いっきに読み終えました。

 ある意味、周囲のよどみのような思惑に翻弄されるような状況の中で、真摯にわが身に与えられた使命を果たす柴崎と、それを支える人の話、そして、いつの世にも、どの世にもあるのだろうと思われるよどみとの対比は、よくある構成ながら、感情移入していくに十分なものをもっていたと思います。

 とても真摯な本で、また興味深いエピソードで、手にとることができてよかった本だと思いましたが、映画化されることがなかったら、ここまで書店で平積みになることもなかったのではないかと思ういぶし銀のような本です。

 もし、このお話が映画化されることがなかったら、この本はここまで読まれなかったかもしれず、また、この柴崎氏ほかの測量師のかたがたの苦労なども、知られること少なきことだったかもしれません。そんな意味で、まさに、地上の星…”プロジェクトX”みたいなお話だと思いました。

 それにしても、自らで情報収集、分析、判断することなく、無責任なノリとメンツばかりで決定する“上”と、それに翻弄される”下”、その構図が、今に通じることか…。 よどみ多き世情の中の清涼剤にもなりえる、また、そのよどみにも心が戻ってしまう口惜しさのあるストーリーでした。

  

この本の作者の新田次郎氏は、「国家の品格」などで知られる藤原正彦氏のご尊父。藤原氏の他のエッセイなどで、藤原正彦氏の処女作「若き数学者のアメリカ」などが出版されるときのいきさつには新田次郎氏も、父として、また先輩の作家として…どんなふうに思っていたかなどが描かれていて、この本の家庭人としての柴崎氏の描かれ方を読みながら、ふと家庭人としての新田次郎氏のことも勝手に想像がいたってしまいました。

 

 測量師という仕事を初めて知った本で忘れられないのは、以前も書いたことがある気がしますが、キップリングの”少年キム”という本です。”インドの放浪児”というタイトルで、少年少女文学全集?ではじめて読んだものですが、この本もまた手にとってみたいと思います。こちらは、インドのヒマラヤが少しでてきますが、測量がメインのおはなしではありません。昔でいう”スラムドッグ&ミリオネア”…?かもと

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