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【映画】劒岳 点の記

 …原作だけ読んだだけでは…と、やはり気になって見てまいりました。映画「劒岳 点の記」

 見に行ったかたがたの評判というのは、必ずしも、”映画”としてはよいものではなかったのですが、自分では登ることがないであろう山の頂からの清々しい景色をみるだけでもいいかな・・・と、ちょうどシネコンの近くの場所で3時間、ぽっかり時間があいたもので、これも何かのお導き。ちょうどレディスデーだし♪と。

 ストーリーは、原作と違って、前人未到とされる山を、地図を作るために登る測量士チームと、民間の山岳会の登山チームがほぼ同時期にめざし、メンツをかける帝国陸軍メンバーと、まさに煽ること、それがお仕事というマスコミさんが煽り、先陣争い?のように仕立てていました。

 今回の鑑賞で初めて気がつかされたことは、”映画”と”映像”は違うということでした。いろいろと評もあるかと思う映画ですが、”映像”を見るという意味では、映画館に行ったことを納得できました。CGや各種効果?などで、どんな場面でも作ってしまえるような中、一生懸命カメラをまわすことにこだわったというものが伝わってきましたから。

 今では貴重になった気がする昔風の実直さ、真面目さで撮影されている映像というのは、心の浄化機能?のようなものがあるのかもしれません。

 そういうものを期待されるかたにはおすすめの映画だと思いました。

 なぜ一番に登ることにこだわるのかが、原作を読んだだけではよくつかみきれなかったのですが、映画のほうをみて、あの山の状況を見て、なんとなくその一端がわかる気がしました。

 そこに道がないから、価値があるのかもしれないと。

 そこにないところに道を探し、そして次の人のために、道を作るということはすごいことだと思います。

 ”ぼくの前に道はない。ぼくの後ろに道ができる”というのは、人生の道程だけではなくて、未踏の山にもあるのかと。

 劒岳は、今は、登山ルートができ、シーズンのピークには、頂上は混雑するほどだとか。もちろん、今の整備された登山道を歩いて登られるのも体力のいる大変なことだと思います(私には気力体力がとてもとても…)

 そういう道を探し、そしてそれと同時に地図を作っていったという意味で、この測量士さんたちは素晴らしいのだと思いましたし、実際に、登山としての歴史を開いていった山岳会のかたがたも素晴らしいのだろうと思いました。

 映画では、山岳会のかたの服装などが、なんともイマドキのイメージからすると、とても軽装というかおしゃれすぎるほど…でしたが、エベレストなどに登頂された人の昔の写真をみても、やはりびっくりするほど薄着?なので、こういう感じだったのかもしれないとも思いました。

 

 劒岳に限らず、たくさんの地図上の”点”を残し、”道”の礎を作ってこられた多くのかたがたと、一生懸命、撮影されていたのだろうなぁと思うこの監督はじめ制作サイドのかたに敬意を表したいので、ネガティブなことは書かないつもりなのですが、ひとつだけ、個人的な嗜好と期待から、また初めて気がつかされることになった点を書かせていただきますと、映画において、音楽がとても大事だ…ということがとてもよくわかりました。

 この映画の音楽は、ほぼ全部クラシック、とりわけバロック(バッハやヴィバルディなど)の定番の曲から選ばれていて、この映画オリジナルの曲?というのはほぼなかった気がします。大好きな曲が映画館の音響で聴けるというその点では最初は嬉しかったのですが、途中から、だんだんと、このあたりできっとこの曲が… とわかってきてしまい、複雑な気持ちになってきました。

 ストーリーのおおよそを原作を読んでいて知ってしまっていたからかもしれませんが、えっと、ここでこの曲が使われて、ここでもこの曲で…と、曲と画面の対比で追っていきますと、特に、最後の”さて、いざ頂上へ”というところにまできたところでは、「もうここで流れるとしたら、あの曲のあの部分しかないでしょ…」 と思った曲が、そのままキンコンカンコンで流れてきました。確かに、私が知っている曲の範囲では、それが一番あいそう…と思うのですが、さて、では予想クイズの正解として、”あたった♪”…と喜んでよいものかどうか…。自分の中では、その曲は忘れえないあるシーンの思い出とともにあるもので、肝心の映画でのシーンが、自分の中ではその音楽のために、もうすでに別の色のついている追想のほうに流れてしまったりしました。

 映画のために曲が書き下ろされること、場面ごとに演奏されたものがあることなどの意味と意義を、しみじみと感じました。

 …などとも書いてしまいましたが、この映画は、最近の映画ではなかなか感じることができなくなった実直さ?のようなものが伝わってきまして、映画館で見ることに納得ができました。

 だんだんと蒸し暑くなってきますと、こういう清々しいおはなしは、清涼剤になります。

 それにしても美しい山々でした。実際にあのような山々をご覧になられたかた、うらやましいです。

 

…映画での演奏は仙台フィルハーモニー。このCDよりも、もう少し骨太に感じる演奏でした。

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