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【読書】震えるスパイ

 ウィリアム・ボイド氏著の“震えるスパイ”を読みました。

 シングルマザーでもある大学院生の娘ルースは、母親のサリーから、ある手記を渡されます。それには、母親の本名が、エヴァ・デレクトルスカというものであり、第二次世界大戦中にイギリスの諜報員として、いろいろな作戦に関わり、そして今、命の危険を感じている理由が書かれていました。娘は母から依頼されたある調査をはじめ、そして母娘は…。

 …というコスタ賞最優秀長編賞を受賞したという本格スパイ小説です。母の手記と娘によるおはなしの部分が交互に書かれていく中で物語は進行していくのですが、その流れが非常に自然で、おさえられた表現の中に強さを感じ、胸の不思議なざわつきを覚えながらも、すっきり感をもって読了する作品でした。

 スパイ小説なので、ここで細かくストーリーを書くと、これから読まれるかたのお邪魔にしかならないので、その点はこれ以上触れず、ざくっと大枠で、私がこの本を読んで、一番、考えさせられたことを書きます。それは、”異性と知り合っていく”…というプロセスのことでした。

 男と女はどこまで互いの心を推し量り、そしてその予測に従って行動したことが、正解に結びつくのか?  自分以外の誰をも信じてはいけないとされるスパイの世界で、人とわかりあえるとはどういうことなのか。また、そんなスパイ以外の世界で、人と人とがつながりあうのは、いったいどういうことからなのか。

 そのあたりの細やかな描写の果てに、なお、自分への問いかけとして、読後も深く残るいところでした。

 私は、スパイなどではない、平凡な人間で、“人はみんないい人だ”という出発点でものごとを考えていくほうで、日頃は、周囲のかたみなさんのご厚情のおかげで日々を過ごせているのですが、たとえば、特に誰かと特にかかわりあうとき…、そのかかわりあっていくプロセスを、この本を読みながら振り返らないではいられませんでした。特にこの本は、同性同士のプロセスというよりも、異性同士のプロセスがメインでありましたので、今回はそちらにフォーカスして考えていくこととなりました。(これは特に恋愛に限ったことではなく、友情をはぐくんでいく時にもまた然りで)

 あらためて考えてみますと、同性同士の場合、ある程度は考え方や行動が予測でき、たとえば中心角120度の扇型の中にそれらのほとんどの点は入る…気がするのですが、私の場合は、異性の場合、360度全方位にわたって、点が分布し、行動も予測不可能であることがままあります。

 …でも、それだからこそ、そんな全方位に思えるかたがたの中から、自分と方向性が似ていたり、たとえ方向性が違っていても、それを知りあっていくプロセスを、いとをかしと共有できる人の存在が気になっていくのだろうと思います。そういう存在が稀だからこそ、そんな人に出会えたら惹かれるのだろうなぁとも思います。

 この本の主人公は、2人の非常に頭脳明晰なシャープな女性で、自らの心を分析していくことができます。”自分を客観的にみることができる”彼女らの眼を通しての、そのプロセスの構築の妙がとても興味深いものでした。また、すぐれたスパイであると同時に女性であるだけに、愛する男性を… という想いが痛いほどにわかり、複雑な思いを抱いてしまう本でした。(あー、おはなしの内容を具体的に書けないので、ごにょごにょと…)

 相手の性格、思考回路、表出の仕方などを知りぬくほどの間柄になっていくとき、それは確かなことになっていくようで、またとても危ういことでもあるのだと…そんな気がいたします。

 主人公が女性2人…ということもあって、その心理描写に納得がいきやすいのではないかと思い、主に女性のかたにおすすめしたい本ですが、この人とならば…という異性のかたと感想を交わしてみたくもなられる本かもしれません。考えてみると、この著者は、男性なのですよね…。

 うーん。なんともすっきりとは書ききれず、自分の心の中で、自分だけの感想ばかりが走ってしまうのですが、今回は、震えるぴょん…ということで、お許しを。(意味不明)

 なにはともあれ、私にとっては久々のスパイ小説。そして久々の、”男女のかけひきこそいとをかし”の小説でありました。

 

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