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2008年8月

【観劇】さんしょう大夫

 前進座による公演、「さんしょう大夫ー説経節よりー」を鑑賞。

 嘉穂劇場という、http://www.kahogekijyo.com/ ”江戸時代の歌舞伎様式を伝える芝居小屋”に、ぜひ一度行ってみたかったのです。数年前の水害で大きな被害が出たときに、多くの俳優さんたちからの支援で復活したエピソードを、ニュースでもよく聞いていましたので。

 演劇好きの知人に誘われ、連れていってもらいました。まず、劇場の外観にびっくり。それから、中にびっくり。升席におざぶとん。劇場内の風情はすっぽり、”座長大会”です。…といっても、座長大会なるものもそういうお芝居も見たことがないので、井上ひさしさんの本で読んだりしたイメージだけなのですが。

 本当に演劇が好きなのだなぁ…と感じられる皆さんでいっぱいで、とてもあたたかさのあるよい雰囲気の中で、開演。いきなり説経節が唱えられ始め、舞台正面には、その字がうかびあがりました。劇場の左右の廊下との区切りの戸も、みごとに照明で活かされていて、舞台の上だけでなく、劇場内全体が”その世界”であることに、まず素人はびっくり。

 物語の大筋は、だまされて人買いに売られた、高貴の生まれの姉弟(安寿と厨子王)が、苦労を重ねていき、やがて一人は逃げることができ… というものです。

 子供のころの絵本からおなじみで、十分に知っているはずのストーリーなのに、一瞬たりとも気がぬけるところはなく、途中のお休みをはさんで、最後までいっきに見てしまいました。とても力のある作品だったと思います。

 芝居をされておられるかた全員で、説経節をとなえられ、音楽も舞台上で皆さんが分担してされる…ということで、音による表現もとてもみごとでした。衣装の転換もおもしろく、音に衣装にと、出演されておいでの皆様はさぞお忙しいだろう…と思わずにはいられないほどでした。

 最後の挨拶のときには、花束のかわりに、お酒びんがプレゼントされていて、それにもまたびっくりしました。 映画館では、味わえない人と人とのコミュニケーション、劇場全体が活かされる舞台… まさに、ナマの良さだと思いました。連れて行ってくださった知人から、いろいろと市民劇場のシステムなどを教えていただきましたが、そのかたの熱さがまた素敵でした。年に数回の公演。その場所、その時間は、他のすべてのことを忘れて没頭できる…その魅力が伝わってきました。

 ほぉぉぉ、うわぁぁぁ、へぇぇぇぇ…

 貧弱なボキャブラリーでしか感想が書けない自分が情けないですが、とにもかくにも、魔法にかけられたような夜でした。

 観劇を終えて外に出ると、もう風は涼しくて。そろそろ春眠から続いた夏眠は終えるころだと感じました。今年の秋冬は、春夏にさぼったキリギリスライフのツケを払うべく、これからちゃんと動くことができたらいいな…と思いました。時間貧乏の秋の気配です。

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【映画】スカイ・クロラ

 とても不思議な映画を映画館で観ました。「スカイ・クロラ」。

 あまりに美しくて息をのむような3次元的描写の中で、2次元的に描かれる大人にならないパイロットたちの、どこかやるせない、透明な悲しみがあるストーリーでした。

 現実の世界から離れていることの想像力に乏しい私は、うまくストーリーも書けないので、劇場で買った“オフィシャルガイド”から、抜き書きしますと、

 …”時代も、場所も明らかではないどこか日本とよく似た国で、果てしなく続く戦争。レシプロ機が大空を舞い、戦争がショーとなっている世界で、戦闘機に乗り込み、戦う人。 その中には、大人にならないパイロット「キルドレ」の姿があった。-これは、飛ぶために生まれてきた永遠の子供たちの物語。…

 原作が、森博嗣氏で、監督は押井守氏。

 ずーっと“少年少女”?のままのはずのキルドレと、その中で”大人”的なことをしてしまった人と、そして、その姿こそ見せないものの、確かな現実?(そしてたぶん大人?を意味する人)として登場する“ティーチャー” なる強力な敵のパイロット…のストーリーには、想像力貧困な私では、すんなりとはわからないところがあったのですが、それでもなお、あまりに美しい映像と、そして音楽の中で繰り広げられる世界に魅せられました。

 予備知識無しの一回の鑑賞ではわかりきれないところもあったのですが、人が大人になることとはどういうことか… その意味を、人を想うことを軸に考えさせられる映画でした。どうにも消化不良なので、これは、原作を読んでみるしかないと思っています。原作のシリーズは5冊あるそうですが、とにもかくにも、映画と同タイトルの一冊をと…。

 映画は一人で行く…が基本なのですが、この映画は、半年くらい前から一緒に行く…という約束があって、封切の昨日、出かけてまいりました。夜で1000円均一で見ることができる上映時間だったのに、”おまけ”のストラップ目当てで、つきあって買っていた1300円の前売り券で入場。

 たまには、こんなふうに、あるフォースが働くことで、それまで知らなかった世界が広がることも良いことだと感じました。

 それにしても、本当に美しい…。

 絵で描かれた映画…というのは、これまではあまり特に関心がなかったのですが、この映画で見方が変わりました。

 緑の中の滑走路があらわれたシーンでは、まるで、フランクフルトの空港などにと降り立つ前の豊かなドイツの森を思い出さずにはいられないほどにリアルで、また、非常によく書き込まれている室内の場面では、その壁紙やインテリアをもっと見たいと思うほどでした。そんな、見事な背景画の中で、キルドレだけが、妙に2次元で書かれて登場してくる違和感で、もうこの世界に心が入っていってしまったのですから。

 実写ではできない表現方法としての手法… としての意味がわかりました。このストーリーを表す方法として最適だとも思いました。

 何よりも、青い空と白い雲が美しすぎ、あの空に悲しみがあることが心にしみました。

 そして、今、あらためてこれを書きながら、振り返れば振り返るほどにいろいろな重く深いテーマがそこにあったことに気がつきました。大人になることってなんでしょう?“自分”とは?人はなぜ人を愛するのか?…。

 もう一度じっくり見てみたくなっています。本を読んでから見に行っていればよかったかも…。

 原作の単行本のカバーがとても美しいです。思わず本棚にディスプレーしたくなるほどに。

オープニングの曲をきいただけで、思わず欲しくなったサントラ。そして飛行機も。

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【読書】悩む力

 「知」という言葉はなんと甘く心をくすぐることばでしょう。

 自分の中でそれへの憧れと、満たされないものを感じるからかもしれませんが…。

 人間がほかの多くの動物と違うから、豊かに「知」を持つから、それゆえに「悩み」が存在し、その「悩み」を引き受けていく覚悟をもって生きていくことが肝要である…。

 姜尚中氏著の「悩む力」を読みました。いろいろなところに、思わずラインマーカーをしたくなるほどに共感する本でした。文豪夏目漱石と、社会学者マックス・ウェーバーの生き方と言葉をはじめ、いろいろな人の言葉と、著者自身の生きてきた歩みと考えをもって、世の悩みある人へ、力強い肯定感を与えてくれます。

 これだけいろいろな人の言葉が引用されているのに、それがちっとも“借り物”の言葉でないと心に染み入ってくるのは、それだけ著者自身の悩める体験によって、咀嚼されいるからでしょう。それを超えての言葉の先には、突き抜けた空の青さのようなものをみる思いでした。

 この本を読んで、”あ、結局、同じことを言っているのでは…”と思い至った本があります。こちらでも紹介させていただいたことがあると思うのですが、三田誠広氏の”般若心経の謎を解く”です。この本を読了したときのあの納得感をお邪魔しないためにも、今はここでこれ以上は書きませんが、”悩む力”と非常に通じるところがあると思いました。勝手な思いかもしれませんが。

 なお、最後に、著者のこれからの夢が書かれています。夢は人それぞれにしても、悩むことを潔く引き受けた人生で不可欠のものとして、その先の夢…があることの意義が心にしみました。

 最近は、なにかにつけて責任転嫁や、責任回避行動ばかりがニュースや身近でも目につきやすくなっていますが、潔く引き受けて生きることの意味と意義が爽快に感じられる本でした。

 

 

「悩む力」の中でたびたび登場するV・E・フランクル氏の本はかねてより忘れがたいものでした。心に残っていた言葉で検索してみると、こういう本をみつけました。

それでも人生にイエスと言う… アウシュビッツの状況の中で、人として生きたいと願った人の魂を思うとき、言葉にできないものがこみあげてきます。

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