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【読書】決壊

 先日読んだ「象の背中」が触媒型の本だとすると、この「決壊」はこの本自身が大きな反応を有する物質のようでした。その反応熱の中に自分の心の中で渦巻いている最近のネット社会についての思いや疑問を閃光とともに見る思いであり、また、その反応によって生じた衝撃波をまともに受け、茫然自失となってしまうような本で、感想も、とても言葉にしてうまく表現することができません。

 秋葉原の事件が起こった後、たまたまつけたテレビのチャンネルで、作者とこの本が紹介されていて、即、本を予約したものの、届いた本を手にしてまずびっくりしました。小口というのでしょうか、本のページの端が全部黒なのです。以前、ここが赤い本をどこかで見た記憶があったのですが、この黒は、まさに“悪魔”を予感させるようで、手にするだけで震えがくる思いでした。

 内容は、ある平凡でよきパパであるサラリーマンがバラバラ殺人事件の被害者として発見され、その実兄が犯人としての疑惑をかけられる中、その犯行にからむさまざまなネットの状況、世の報道、ある少年にまつわる話、警察捜査などが、丹念に描きこまれていき、やがては連続自爆テロにむすびつき、ラストシーンまで、深い悲しみの流れが濁流のように進んでいく…というものです。

 すごいな…と思ったのは、とにもかくにも観察力と分析力にあふれる作者の目で映し出された現代の世相を、透明な悲しみと怒りとともに、抑えた筆致で描ききっているこの本の持つ力でした。その底流に確かな知識と深い思考の過程があることは行間からにじみでていて、それらが揃うことによって、それはまさに、心の中のダムを決壊させるかのような力をもたらしていました。実際、「決壊」したのは、この本の中で言うならば、ラストシーンであらわれていること、また、それだけではなくさまざまな意味の決壊がある気がするのですが。深い、深い悲しみを感じました。

 平野啓一郎氏。凄い作家だと思わずにはいられませんでした。

 また、思いがけなく、この本は私が住んでいる街のそこここが出てくるご当地本?でもあり(平野氏はこの地のご出身)、それだけに、その光景からの描写が蘇りました。

 秋葉原で起こったことと通じるところがあり、まさにタイムリーな出版には本当にびっくりしました。めったに買わない単行本上下巻、しかもまずすることはない発売前からの予約…での購入でしたが、期待は決して裏切られることなく、むしろ想像以上の作品に、自分の心までもが決壊してしまいそうな読中感を持ちました。

 これが映画化されるとどうなるだろう…と思いました。被害者の兄のキャラを誰がつとめるのか…。

 …ネットに書き込みをする…。何を求めて書きこむのか…。こうやってブログを書く自分の行為も含めて、考え続けています。

 

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