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【小説】償い

 あるホームレスの男性が探偵役となって事件を解決するミステリー。

 事件を縦糸とすると、”そのホームレスの男性が元は医者であり、その過去の傷をひきづって自らその現状を選んだこと”が、横糸となって、ストーリーを構成していきます。

 その横糸に当たる部分は、ネタばれでもなんでもないように、本の解説部分や、いろいろなところに書かれていますが、本当は本題のミステリーと同様に読む人がその過程で初めて、それらのデータに出会っていくべきものではないかと思ったので、あえてここでは、その内容を書きません。

 ただ、読み終わってのち思ったのが、もしすべての医者がこの主人公のように考えたら、いったいその中のどれほどの人が、医者という職業を続けていくことができるのだろうか?…ということです。

 ”医者だから””医者のくせに”… 人の命にかかわることとなると、すぐにそういう接頭語がつきがちですが、この本の主人公の医者ほどに意識することはまた、いかがなものか・・・と思わずにはいられませんでした。

 手塚治虫氏の「ブラックジャック」という作品で、主人公の名外科医(資格をもたないモグリという設定ですが)が、あるとき、精一杯努力して患者を救おうとして、それを果たせなかったときに、ある恩師の言葉を思い出します。正確には記憶していないのですが、その言葉は”人が人の生死をどうこうしようと思うことはおこがましいことだよ”というような意味でした。

 この作品を読みながら、この主人公に、ふっとその本を渡したくなりました。

 また、”他者の心を傷つけたものは、どうやって裁かれるべきなのだろう?”というのが、この医者が抱える大きな命題です。

 その裁きを自らに与えているかのような主人公ですが、この世の中に、一度も他者の心を傷つけることがない人はいないはず…。

 

 とてもテンポのよい展開で、スムーズな語り口で、登場人物にも感情移入できてあっというまに読める本で、その中に、臆することなくシンプルに示される、あまりにストレートな命題だけに、なにかこの命題をここまでシンプルに示す意味がほかの深いところにある…ような気がしました。でも、それが何かはつかみきれず、とりあえず表層だけを考えると、イカロスを見ているような気に少しなったりしました。

 知人から、この著者が書いたほかの本を薦められたのですが、たまたま書店でこの本を先にみかけたので、この本と、それからもう一冊(これまた薦められた本とは別の本を)買ってきてみました。 ”ブラックホークダウン”を読みかけなのですが、あっというまに惹きこまれてしまったこの本を先にあっというまに読み終えてしまいました。あっというまに読みすぎてなにか見落としてしまっているところがあるようなそんな不安を抱えています。

 

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