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【映画】クィーン

 イギリスのダイアナ妃が交通事故によってパリで亡くなったあとの英国王室と、就任した直後のブレア首相とその周辺の動きなどを描いた作品、「クィーン」をDVDで鑑賞しました。

 なんといっても多くの登場人物はニュースやドキュメンタリー映像で同じの人ばかり。

 最初のほうは、演じた役者さんが、ご当人に「似ている」「似ていない」などが気になったのですが、お話が進んでいくうちに、そういったものを超えたこの映画自体の「声」に気持ちがフォーカスしていき、顔の造形的相似などは、ほとんどどうでもよくなっていっていました。このキャストは、ご当人に似ていることを第一条件に起用されたのか、それとも演技の力によって起用されたのか…と考えずにはいられないほど、特に、エリザベス女王を演じたヘレン・ミレンさんはすごいと思いました。 大英帝国を背負って生きていく運命のもとで、真摯にその役割を果たしている女性が、ふっと、本来の人間としての性格を見せる場面(自分で運転する車にトラブルが起こったときの様子と、そのときに大鹿とあうことで見せる内面)がとてもよく描かれていたと思いますし、イデオロギーを超えて、ひとりの人間の生き方として、エリザベス女王に敬意を抱きはじめるブレア首相の言葉がとても生きていたと思います。

 「称号など必要なかった」と、追悼のスピーチの中で述べられるダイアナ妃と、生まれながらに背負うしかない「称号」を持ったエリザベス女王の生き方が、鮮明に描かれている作品で、王女が自分の父親の職業を「(長年勤続の)接待業」と称して、自らもまたその運命のもとで生きていくことをあらわした「ローマの休日」を思い出さずにはいられない作品でした。

 この作品にどこまでイギリス王室が関与したのかはわかりませんが、ある意味では、ダイアナ妃に比べて一方的に語られることが少ない(語ることをしなかった)立場の人たちの思いを伝えることでいささかでも有る種の公平性が生まれるといえるかもしれません。

 ただその一方で、一般の感覚とは違う(母を亡くした王子たちを、気分転換に狩猟に連れていく…というあたりなどは、不思議な気がします。)ような場面も描かれていることから、その両面を受け入れていく英国王室の懐というのは、かなり“凄い”と思いました。

 自動車の構造にも通じている女王、少女の持った花束、葬儀作戦の暗号コードなどのいくつもの話の小道具もさることながら、なんといっても素晴らしいと思ったのは大鹿の使われかたでした。大きいから(=偉大だから)目にとまる、狩ろうとされる、守りたいとされる。守ろうとしても、大鹿は他の領地に行ってしまう自由度を持っている。それがゆえにまた…(ここはネタばれなので書きません)…。このシカに込められたものを想うほどに、この映画はやはりよく作られている…と思わずにはいられませんでした。

 ダウニング街10番地の主殿が、これほどまでに素敵に描かれている映画も記憶にはなく、(「ラブ・アクチュアリー」のヒューさまはまた違った意味で素敵でしたが)、いろいろな意味でずしんと心にきました。

 世界中の女王の中で、最後まで存続するのは、大英帝国の女王さまとトランプの女王…とはよく言われたことでしたが、そんな言葉をここに書くのも…と思うほどに、大英帝国の女王を半世紀以上も続けていくことの重みに打たれた作品でした。

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