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2007年8月

【映画】華麗なる恋の舞台で

 昨日、時間がぽっこりあいて、飛びこんだリバイバル館で、思いがけず、「わぉ」…となる作品に出会いました。「華麗なる恋の舞台で」…という、サマセット・モームの「劇場」(未読)を原作にした作品です。

 1930年代のロンドン演劇界。日々続く公演にうんざりしていた、40代半ばの人気女優ジュリア(アネット・ベニング)は、劇場の経営者である夫(ジェレミー・アイアンズ)のところに訪ねてきた、息子ほどにも歳がちがうアメリカの若者TOM(ショーン・エヴァンス)のアプローチで恋に落ちます。でも、やがてTOMは心変わりして、あろうことか、新しい恋人で女優の卵であるエイヴィス(ルーシー・パンチ)に、舞台でのよい役を…と彼女に頼む始末。

 傷ついた彼女の心をいやすのは故郷と、昔からのよき異性の友人、タマリー卿(ブルース・グリーンウッド)と、彼女の心の師で今は亡き劇場の座長であったジミー(マイケル・ガンボン)の亡霊。

 なんとかロンドンに戻った彼女は、TOMの彼女とともに新作に取り組むのですが、その時に、息子ロジャー(トム・スターリッジ)から、ショックな言葉と、彼女の夫がまた、TOMの彼女とも…という話を聞きます。

 舞台稽古では、もう次の世代のヒロインに華をもたせるように演出をかえていく、どこかさびしげなジュリア。やがて、その舞台の初日の幕があきます…。

 …と、このあとが、とにかくとても眼をみはるような展開なので、レンタルビデオや名画座などでご覧になられる機会があるかたは(特に女性)…とおすすめいたします。

 すごくあっさりとした、冷たいヴィシソワーズ(スープ)のような味わいながら、あとでふっと考えていくと、けっこう深くて、はっとなる部分があります。また、この登場人物が、いずれも”ベテラン女優のプロ””劇場経営者のプロ”ほか、すべてに、そのスペシャリスト…と思えるような割り切り方ができるキャラクターばかりで、プロの在り方を見る映画だとも思いました。

 主役のアネット・ベニングさんは、「アメリカン・プレジデント」がとても印象に残っている女優さんでした。残酷なほど、顔のしわが大写しに何度も何度もなっていて、ある意味では辛い役柄だったのかもしれませんが、すばらしいプロ根性?を見せていただきました。

 また、女優の夫を務める男性も、女優の浮気も自分の浮気も全部、劇場経営のためにはポジティブにとらえていけるようなところがあるようで、これまたその役がらとしてプロと感じました。

 さらに私が一番、「♪」となったのは、ブルース・グリーンウッドさんという俳優さんです。すごく素敵で、このかたがでているシーンでは、脈拍数が増えてしまいました。あとで調べてみると「13デイズ」で、ジョン・F・ケネディ役をしたかただったとは…。

 とにかく最後の15分?が秀逸です。ラストシーンは、深くてしみじみと感情移入できました。”あっぱれ…”です。

 ところで、男性と女性の間では、友情は成立するのでしょうか…。(学生時代とかでなく、たとえばこの映画のように壮年期になって)この映画の中の“友情”に、びっくりするような特殊条件がついていて、そういう条件なしでは無理なのだろうか…と、ふと思ってしまいました。

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【読書】その名にちなんで

 短編集「停電の夜に」(O・ヘンリー賞やヘミングウェイ賞、ニューヨーカー新人賞などを総なめにした作品)を書いたジュンパ・ラヒリ氏の初の長編が、「その名にちなんで」です。

 「停電の夜に」がとても心に響いたのでこの本も読んでみたくなりました。

 インド移民の子としてアメリカで生まれた息子は、ロシアの作家にちなんで「ゴーゴリ」と名付けられました。その父親が、若き日に死に直面しかけた時に手にしていた本からつけられた名前でしたが、彼は、インド系の人としては変ったその名をいやがり、ついに改名します。その“ゴーゴリ”の誕生前から30余年にわたる日々を、淡々と丹念に描いた作品です。

 短編と長編では違うので「停電の夜に」ほどのするどい捻りはないものの、全編を通して流れる透明感と不思議なやるせなさ、真摯さというのは、この作品にも共通していると思いました。長編集でありながら、まるで短編を読んでいる時のように、一行、一行にはりつめた想いを感じました。

 特にものすごいドラマがあるわけでも、ミステリーがあるわけでもありませんが、静かにじわっと染み込んでくるものがあり、ラストにかけては特に、その前のすべてがあればこそ胸にしみるものがある(だから飛ばして読まないでください)本でした。

 すごく良質のアイスティーを飲んだ読後感を持ちました。

 どうなのでしょう。名前というのは。…つい先日、ある人から、私の名前を姓名判断で占った結果がとても悪いので、たとえば懸賞応募のときとかだけでも、別の漢字をあてはめたり、ほかのペンネームを使うようにしたほうがよいと言われたばかりでした。診断された画面を見ると、さすがにうーんとうなりたくなるような結果で、言われなかったら気にならなかったでしょうけれど、言われると気になってしまい、うーん…と考え込んでしまいました。

 でも、たとえどんなふうに変えても、親からもらった名前、その時に親が願いを込めた気持ちは大事に思っていきたいなぁと思います。

 この本の主人公ゴーゴリが、自分の名とどんなふうに向かってきたのか。とても背骨がしっかりした本でもあります。これから秋にかけての時期に静かに手にとられてはいかがでしょう。おすすめします。

 ちなみに、この本によく登場する、ゴーゴリの「外套」。昔は彼の短編集が好きで何度も読んでいたのに、もう二十年以上手にしていないことに気が付きました。あらためて読んでみたくなりました。

 訳をされた小川高義氏によるあとがきも興味深いものでした。新潮クレスト・ブックスです。

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【映画】オープン・ウォーター

 多忙な日々を送る中、やっと休暇でダイビングにでかけた夫婦が、ボート管理者の手違いから、周囲をうごめく鮫もいる海に取り残されてしまうというお話のDVDを見ました。

 とても低予算で、スタントマンも使わず、実際の俳優さんがそこでそのままに演技をしたという映画で、実話をもとにしているとのことですが、“予想外の結末”に、まさか…という気が。

 <ここからネタばれです。読まれたかただけ反転して読まれてください>

 鑑賞後、ネットで感想を見ていたのですが、その中に、”とても巧妙な、逃避手段がとられたのであって、この二人がどこかで今も生活していると考えたい”というようなものがあって、私もそれを信じたいという気になりました。だって…。この状況下では、これを実話をもとに…といっても…と。(周囲の動きだけは実話にしても)…。最後の最後にまさかの怖さがやってきた映画でした。…

 <反転はここで終わりです> ふーっ。

 

 

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帚木蓬生氏の講演会

 「聖灰の暗号」「国銅」などを書かれた作家、帚木蓬生氏の講演会を聴きにでかけました。

 ずっと、その清冽な筆致に憧れてきたかたで、いったいどんな方が書かれておられるのかと、ぜひ“実物”を拝見したい一心ででかけました。外見のイメージは、温厚で知的な紳士でまさに、作品のイメージそのもの。でも、ご講演は、最初から会場を笑いの渦に巻き込んでしまわれ、時にはシャウト(?)され、熱く語られるかたで、勝手に想像させていただいていたイメージと大違いでびっくりいたしました。ご自身で、”吉本興業出身”と言われるほどの非常にユーモアあふれるお話で、ともすれば、暗くなりがちな、社会的な問題を含む病気についての話題を、みごとに伝えられておいででした。

 今回の講演は、作家としてのお立場ではなく、精神科医としてのお立場からのもの。ギャンブル依存症(正式には”病的賭博”というそうです)についてのお話でした。

 ギャンブル依存症は、「嘘」と「借金」が二大症状で、そのため家族や友人が非常に苦労すること。これは、脳内の物質量が変化する(ドパーミン、ノルアドレナリンが増え、セロトリンが減る)”病気”であり、個人の人格云々ではない。

 治療法は、患者が作った借金は、自己破産や任意整理などの法的な手続きで自分で責任をとらせていき、ギャンブル依存症の自助グループ(G.A ギャンブラーズ・アノニマス)に週1回以上、それから月1回は精神科クリニックに通うこと。

 といった病気のお話だけでなく、この病気を生み出している背景には、社会的な問題がたくさんある。…“ギャンブル”を助長する現状に対しての心の底からのお怒りが、ユーモアあふれるお話ぶりの中からもよくうかがい知ることができました。

 最初は、ただただ笑いの渦に茫然としたのですが、拝聴しているうちに、だんだんと、ああこのかただからこそあの作品が…と、頭の中で、結びついていき、楽しい中に、心のおさまりどころもすっぽり見つかる、また、終わったあとに、そのご講演の内容を多くの人に伝えたくもなる、素晴らしい講演会でした。

 この講演会の情報をくださったかたに心から感謝します。

 ちなみに、今回の講演は、”北九州いのちの電話 開局30周年記念講演”ということで、この講演に先立って、30年の歩みをふりかえられお話もほかのかたからあったのですが、30年間で25万件超の、心のSOS電話にボランティアで応対をされ続けてこられた、この事業をされておいでのかたがたに、心から敬服しています。

 

 

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【映画】かもめ食堂

 まさにヘルシンキの癒し…と感じる映画でした。劇場公開の時から、見てみたかった映画をやっとみることができました。「かもめ食堂」…。

 フィンランドのヘルシンキ。その街の小さな食堂「かもめ食堂」が舞台です。そこの店の主は小柄な日本女性サチエさん(小林聡美)。メインメニューはおにぎり。でも、お客さんはちっともきません。そこにやってきたお客さん第一号の青年からきかれた”ガッチャマン”の歌詞が縁で、図書館であった日本人女性を家にとめ、やがてお店も手伝ってもらうようになります。そのうち、また、荷物がなくなってしまった日本女性も加わり、その3人の日本女性と、店にじわじわとくるようになったお客さんで、静かなドラマが進んでいきます。

 ヘルシンキには、旅の中で、ほんのわずかしかいなかったのですが、それでも、そこで感じた、なんともいえないのびやかさと素朴さは、忘れ難いものでした。一国の首都なのに、ちっともそんな感じがなく、とても自然なのびやかさがあり、その街は歩くだけで、ほっと癒されました。

 この映画の雰囲気が、まさにその街の風を感じるもので、また、このかもめ食堂のインテリアが、まさに北欧のイメージで、白木に水色。そんな中で、いっきに癒され、見始めてそんなにたたないうちに、ストーリーと関係なく胸がいっぱいになって、涙がでてしまいました。映画自体のストーリーも、しみじみとして淡々として、まさに北欧のインテリアのイメージで。強引ではなく、でも、意志をきちんと通す、そんなサチエさんに惹かれながら、自分にとって大事なことって何かを気付かされるような、そんな映画でした。登場人物の描かれ方が、それぞれにとてもよかったです。いろいろな背景などは、わからないまま…ばかりなのですが、その、”そっとして触れない感”がよいのも…と思いました。

 この映画の中で、荷物をなくしてしまった女性が携帯電話をかける場面の、バックに見える白い大きな船シリヤラインで、昨年夏、まさにヘルシンキを訪れたので、その船旅のことも思い出し、彼女が電話をかけているあたり、市場、ほか、いろいろなところも、ああ…と、懐かしく思い出しました。が、そんな個人的旅行体験なくこの映画をみても、きっとほっと癒されたと思います。

 もともと、映画の舞台になったところが、自分が行ったことがあるところだから・・・とかそういうことには左右されない方なのに、こんなにこの映画に反応してしまったのは、なぜかと今も考え続けています。

   疲れたときに、また見たくなる、またインテリアを、この映画の中のように変えたくなる…そんな癒しのかもめ食堂でした。

(ヘルシンキの写真を追記しましたが、拡大すると、空の一部しか映らない…状態?になりますので、申し訳ありませんが、小さくしてご覧ください…)

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【映画】ヒューマン・トラフィック

 人身売買を描いた非常に心に迫る作品に出会いました(レンタルDVD) 

 ”ヒューマントラフィック”という作品です。ロシア、マニラなどで、人を集め、アメリカその他で、商売をする悪役をロバート・カーライルが、そして、それを取り締まる移民関税局ICEの捜査官をミラ・ソルビーノが演じます。

 若い女性が、また小さな子どもたちがどんなふうに被害にあってしまうのか、その現状とその先とが、鋭く描かれていました。3時間の長い作品ですが、鑑賞後にインターネットであれこれ検索していて、これがテレビ特別ドラマであったと知ってびっくりしました。(ドラマと映画の違い?がよくわからないのですが…)ロバート・カーライル、ミラ・ソルビーノ、その他まわりのキャストも、とても好演をされていました。脚本も見事だと思いました。一生懸命伝えようとした人たちがいたのだということがよくわかる作品でした。

 スウェーデン映画で、”Lilya 4-ever”(リリヤ・フォーエバー)という、やはりロシアの女性をターゲットにした人身売買を描いた作品があるのですが、それとともに忘れられない作品になりました。

 ある国で、人身売買の被害にあっている女性たちとその子どもたち(父親は誰かはわからず)にあったことがあります。その女性たちの境遇を変えることはできないけれど、せめてその女性たちの子どもの教育支援をしようというNGOの人たちを訪れた時のことでした。

 世界中では、年間80万人も被害にあっているとのこと。それらの人の家族は…と思うと心が痛むばかりです。

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【映画】Mr&Mrs.スミス

 ”ジョン・スミス”というと、銀行の”伝票記入見本”の名前の定番になりそうなほどの、”よくある名前”。

 そんな名前で殺し屋稼業をしていたブラッド・ピッド扮する男性が、結婚した相手(アンジェリーナ・ジョリー)は、実はライバルの殺し屋シンジゲートの辣腕殺し屋。もちろん互いにそんな稼業とはつゆ知らずに、平凡な?夫婦をしていました。が、ある人物を殺す指令をそれぞれの組織から受けた二人は、その実行現場ではちあわせになったことから、互いの本当の職業?を知り、それぞれの組織のルールで、48時間以内に相手を殺さなかったときには自分が消されるということ。…そして彼らは、”あの愛はどこにいったの?”という死闘を繰り広げはじめるのです。

  …という映画でしたが、ひとことでいって、間違ってこの映画を食べてしまった犬は、消化剤の大量摂取が必要なほど…の”超過激夫婦喧嘩ムービー”。これほどまでに派手な夫婦喧嘩はそうそうないでしょう。この二人の防弾チョッキは高性能で、彼らを狙うシンジゲートの人の着る防弾チョッキは、簡単に貫通する材料?らしい様子など、つっこみどころはあるものの、あっけにとられた満腹感でこれ以上は言葉になりません。

 ただ、夫婦喧嘩の戦場になった家をみて、この映画が、アメリカの住宅ローンの破たん・住宅ローンの貸出制限強化報道の前でよかったかも?? …と思いました。

 まぁ、ローンを組む必要もないほど、キャッシュを持っていると考えるのが妥当とも思いましたが、もしも、リフォームも新築も、彼らがするとしたら”高リスク群”として、融資は躊躇されるかもしれず。 

 ああ、それにしてもすごかったですワン。

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【読書】聖灰の暗号(上下)

 ぱっとタイトルを見たときには、なんだか「ダヴィンチ・コード」の二番煎じのようで (あちらは、”聖杯”の暗号…。ダヴィンチコードは、おもしろくていっきに読みましたが二番煎じでは…と。)一瞬ひいてしまったのですが、帚木蓬生氏の本ならば…と、新聞広告で見かけて、すぐに注文を入れました。でも、その新聞自体を数日遅れでみたせいか、Amazonでは、もう在庫切れ。市中の書店で上下一部ずつ残っていた本を目にしたときには、さながら超お買い得品籠の中のものをゲットするように、すっと手にして、そのままレジに向かいました。

 それでも、それからなかなか手にする時間がなく(ゆったりくつろいで自分の時間として読みたかったせいもあります)、お盆になってようやく読み始めたときに、あるかたから、「この本がすごくよいから・・・」とお薦めメールをいただき、いっきに背中を押していただいたように読みました。

 ああ、満足…。久々にこんな時間と、こんな本に出会えました。

 お話は… 日本人の歴史学者が、調査研究に出かけた先のフランスのある図書館で、フランスのカタリ派(キリスト教の異端とされた一派)への迫害に関する古文書をみつけるのですが、その続きはどこかに保存されているようで、彼はそれを求めていきます。ただ、彼が学会でその発見を発表したために、”ある手”のものから、刺客?が送りこまれ、彼の周囲で、次々に殺人事件が起こります。素朴な現地の人や、美しい精神科の女医らの助けもあって、彼は一歩一歩その真実にせまっていきます… というものです。

 カタリ派というのは、どこかで名前をきいた記憶がある程度で、読後、手元にある本やインターネットで調べても、いろいろな記述がされていて、この本に書かれているのは、もしかしたらある一面かもしれません。でも、この件についての宗教的真実がどうであれ(これを論じたり、検証する力は私にはありません。)、作者の「信仰とはなにか?」という問いかけが、真摯に伝わってくる、極めて上質のフィクションだと思いました。

 文中の詩や手記が、本を読み終えるまでは、さながら、本当にそこにある古文書に思えましたし、読み終わると、よけいにそれを信じたくなりましたから・・・。

 本を読み終わって、知人に電話してこの本の話をしました。すると、その知人からは、南アメリカ大陸ではどんなことが行われてきたか、そんなことも調べてみては?とアドバイスを受けました。広く宗教についてのお話を1時間半もして、パワーが必要でしたが、私にとってはよい時間でした。

 東大仏文科卒業ののち、九大医学部卒業。そして精神科医になられた作者ならではの知識と感性と膨大な蓄積あっての作品だと思いました。主人公も、その主人公のまわりの人々もいつもながらに気持ちのよいキャラで、作者のお人柄もにじみでるようでした。

 それにしても、「受命」といい、この本といい…。

 とにかくまた次の作品を読むことができるまで、いろいろな想いを抱えてしまいそうです。

 

 

 

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【読書】殺意の川

 法廷もののというのは、”どんでん返し”がお決まりですが、そのどんでん返しに思わずうならされました。人の想いとはかくなるものかと。すっと読める文体で、読後感がよい本でした。こんな季節でも、いやな気持になって読み終わることがない、一服の清涼剤にすらなることを期待してページをめくれる貴重な作家なのかもしれません。

 中短編集で、タイトルは「季節のない川」「すみだ川」「罪の川」「偽りの川」「真実の川」の5編によってなっている本ですが、なぜ、川なのか・・・流れるべくしてある方向に流れていくというには、蛇行や伏流水に満ちた川だと思いました。

 特に最後の「真実の川」の動機は、想像もつかないもので、人が人を想うということはこういうことなのか…とその深さに驚きました。

 「殺意の川、小杉健治氏 集英社文庫

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由布院と夢大橋

 毎年、夏になると、行きたい…行きたい…とうずうずしてきまして、この夏もぴゅんと、由布院・くじゅうへ。目的その1は、もちろん高原の涼と景色で癒されること。目的その2は、おいしいものを食べてパワーをつける?こと。

 由布院では、いつものお店で豊後牛と地鶏を溶岩焼きでいただきました。  

 でも、いつもと違い、お店の人が妙にばたばたされています。どうされたのかとお訊ねすると、先日の台風で由布院は被害が大きく、このお店の周囲もまるで海のようになって、パートの人は、道路が寸断されていて来られなくて、オーナーのご家族だけでばたばたと営業を…とのこと。食後に近くを散策してみますと、なるほどもしかして…と思うような痕跡もあり、つくづく自然災害は大変なのだと感じました。

 行き当たりばったりで、とにかくのんびりふらふらする旅。突然の思いつきで、以前、ニュースできいた九重の”夢”大橋…、歩いてわたる吊り橋にでかけてみました。高さ173メートル。渡りはじめてすぐ、揺ら揺ら…にびっくり。でも、橋からの景色がとてもきれいで、その揺ら揺ら感もおもしろく、特に橋の中央部では、吹く風がとても気持ちがよくて、満足♪でした。(ただ、往復わたるだけで、500円???)と最初は思ったのですが、納得…??。それにしても、本当に単なる観光用(生活用ではないはず…)で、19億2千万円…。ふみゅ…とは思いました。でも、かなりのにぎわいでしたので、いずれは回収できる金額かも。地元に雇用ができるのもまたよいことでしょうし…。 写真は、橋から見える滝です。そのむこうにくじゅうの山々が見えたのですが、写真では薄くてみえず残念です。。(…すみません。写真は未加工?なのでクリックされると大きな空しか映らなかったりします。お手元の表示でどんどん縮小していかれるか、もしくは、このまま、雰囲気だけ~感じてください。デジカメ初心者ですみません。)042

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【映画】県庁の星

 織田裕二さん演じる“中学から大学までずーっと1番で、県庁にもトップで入った”キャリアが、民間で経験を積むことでそれを行政にいかそうというプロジェクト?に参加。

 決して優等生とはいえないようなスーパーに出向し、そこで、システマティックなお役所とまったく違う世界に、最初は戸惑い、怒り、あきれます。スーパーの従業員たちからは”県庁さん”と呼ばれます。やがてはそこで、本当に大事なこととは何かを学び、その後、県庁に戻ったときには、それまでとは違う視線で動きはじめるというお話です。

 いわゆるお役所の理論には、ときどきびっくりすることがあります。「組織で動きますから」という言葉には、タテの両面以上に様々な含みがあると感じます。たぶん、すごい縦社会なのだろうなぁとも感じます。

 また、どんな社会でもそうだと思いますが、そこにひたりきれる人とそうでない人がいて、これまたどんな社会でもそうだと思いますが、そこに学校をでてからずっと長くいると、その世界だけが”これが社会”になっていくものです。

 民と官では、本当に違うなぁ…と、感じることしきりの昨今なだけに、この映画は、特に脚色されたものでもなくて、そのままか、むしろこれでもまだぬるいのかも…と思いました。映画の中で一番印象に残ったのは、”行政改革で、変えるのは、法律や仕組みではなくて、行政の人の気持ちのありかただ”というような意味のセリフでした。

 映画の中でのセリフにもあるのですが、お役人であった織田裕二さんの顔つきが、スーパーでの経験と気づきをつむにつれて、変わっていきます。そして、本当に歩むべき道を歩き出したときの表情はとても素敵で、そのあたりがよく描けているなぁと思いました。でも、この映画の”そのあと”はきっと大変なキャリアライフがあるのでしょう。でも、頑張れ☆県庁さん。

 たとえ、”組織”であっても、そこにいる人は一人の”人”。 そして人を動かすのは人。

 …外からそんなふうに想って、がんばる”お役所さんの星さん☆”にエールを送りたいと思います。・・・あれ?ちっとも映画の感想になっていませんが、私にとっては想いはせることの多い作品でした。

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【映画】レミーのおいしいレストラン

  世の中には、こんな味の映画もあるのだなぁと思いました。

 アニメ(のぞく、コナン君)を映画館には見に行ったことはほとんどないのですが、先輩の絶賛…もあって、これは要チェックにしていました。

 映画館で、かなり前からいっぱい予告編をみていて、それでストーリーも想像がついて、おなかいっぱいになった気分でいたのですが、どうしてどうして、隠し味がいっぱいで、おいしい映画でした。

 ストーリーは、突然、ある有名レストランの雑用係になってしまった、料理ができない男の子と、食材を組み合わせて未知の味を作ることに喜びを覚える、天性のシェフ・ネズミのレミーくんが、ペアを組んで、レストランのキッチンにたつ… というものです。が、そのストーリーに、世間をよくしっているネズミくんのパパだったり、4つ星レストランをついだくせに冷凍食品開発に燃えるNO実力シェフだったり、辛口料理評論家だったり、男社会で苦労する女性の料理人だったりが、みごとにからんで、よいそれぞれによい味をだしていきます。

 いってみれば、予告編は、塩・こしょうだけの味で、本編は、それにガーリックや、ワイン、クリーム、ブーケガルニ…などで、深い味として作られているような、そんな感じでした。

 ネズミキャラのレミーくんが、とてもきれい好きで、しかもきちんとネズミをしている(言葉を話すのは、ネズミ仲間と、空想の中での大シェフとだけ…)ところの潔さと、ラストの流れが、とてもさわやかな後味を作ってくれた気がします。

 また、レストランと評論家の関係が描かれているのですが、映画と評論する人にしても同じようなことが言えるのかもしれません。いろいろと、含み&隠し味も多い映画でした。

 

 アニメを映画館では見ようと思わない… というかた(けっこう私の周囲にいます)は、DVDになるまで待たれてもよいかと思うのですが、この季節に上映されている作品の中では、十分にカップルの鑑賞にも堪える、貴重な作品?かもと思ったので、ここにそすすめしておきます。

 映画の中で、”ラタトウィユ”という料理がでてきます。南フランス・プロヴァンス地方の家庭料理としてよくきく料理ですが、この料理の使われかたが、またとてもよかったと思いました。

 ちなみに、作り方はとても簡単そうです。(何分、家庭料理なので、各人で自由にアレンジしてよさそうで) 勝手にアバウトにレシピもどきを書くとするならば、

 薄く輪切りにしたナスビやジャガイモ、あればズッキーニ(きゅうりではないほうがよさそう)を、オリーブオイルでいためて、トマトソースとともに煮込む(もしくはオーブンで焼く)…味付けは、塩コショウとワインとローリエなどでお好みの味にする。

 …という感じでしょうか。これだけアバウトに書けるのも、この料理が、家庭でだされるシーンと、レストランでだされるシーンとで、それぞれで、盛り付けは違うものの、通じ合うものは同じだと感じたからだと思います。(このあたりはネタばれも含むのであまり詳しく書きませんが)

 あたたかくても、冷やしてもおいしい夏野菜の料理で、まさにこの映画の公開時期にあったものだと思いました。当分は日本でも食卓に、南仏の味、ラタトウィユが多くのぼるかも? 

 流れ作業のような仕事の流れが、私の手前で止まってしまい、今日は思いがけず時間ができてしまいました。本当は、そんな時間にはほかにすべきことがあるのですが、なんだかそこに時間が空いてしまったことの気持ちの持っていき場?がなくて。こんな時には…♪と、映画にでかけて正解でした。

 来週でも、台風あとの市場が落ち着いて、おいしそうな夏野菜がまた店先にならんだら、早速、ラタトゥイユ…を作ってみたいと思います。

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【読書】アフリカの瞳

 昨日も少し書きましたが、帚木蓬生著 「アフリカの瞳」 講談社文庫 を読了。けっこう分厚い本なのですが、惹きこまれて持ち歩き、いっきに読了。

 日本の医師がアフリカの某国(明らかには書かれていませんが、人種差別政策の歴史云々からどこかは明瞭)で、現地の人のために尽すお話で、前作、「アフリカの蹄」の天然痘との闘いであったことに続いて、この作品では、エイズ(HIV感染)がとりあげられています。

 製薬会社の治験疑惑や、現地での誘拐事件、女性の人権問題なども加味されて、すっと読める中に深さと真摯な想いが伝わってくる、この作者らしい作品です。

 エイズのことについても、非常によく語られていると思いました。家族からの感染が多いこういう国ならではの難しさや悲しみが描かれていました。

 また、母国でない国とどうかかわっていくか、ほかの国でどう生きていくのか…。そういう視点にも考えさせられるところが多々ありました。

 鉄条網で張り巡らされている外国人学校、襲撃を恐れないといけない街の商店。…日本人が海外に進出したときと、たとえば華僑の人が進出したときでは、ずいぶんと様子が違うのだとか。華僑の人のお店は襲撃されない。その理由はなにか…。

 そこに根付いて生きていこうとする人と、外国から利益だけを短期間で得て、去ろうとする人との違いなどが鮮明で、ニュースなどで見聞きする多くの日本人のかかわり方について、ふみゅ…と思わずにはいられませんでした。

 本当に人として”よく生きる”こととはどういうことなのか。

 清冽な気持で読了できました。人を動かすのは人。人の動きをとめるのもまた、人。最近よく感じるそのことを、あらためて感じた本でした。

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