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【映画】バベル

 「バベル」鑑賞。ネットでの賛否両論の感想を目にし、一抹の危惧も抱いていたのですが、良い意味ですっぽり想定をはずされた作品でした。

 1時間半前に見終えて、帰りの電車でパンフレットを読み、駅からの帰路もずっと反芻していたのですが、あまりに書きたいことが多くて、まとまりません。以前、書いていたホームページでは長く長く書いていましたが、なんとなくブログって、ながく書いていいのかな…なんて勝手に自縛してしまって。もしかしたら、しばらく、何回か、あれこれと書いてしまうかもしれません。

 …天まで届く塔…バベルの塔…を作ろうとした人間の傲慢に対して、神が下した罰は、互いの言葉が聞き分けられないように言葉を混乱させてしまうこと。

 旧約聖書にでてくる話と、これをもとに描かれたブリューゲルの絵はとても有名です。それだけに、この「バベル」というタイトルをきいたときには、人々の意志の疎通に問題が生じ、通じ合えない心が悲しみを作り出すドラマ…だと思っていました。ネットなどで、ネタばれなしに書かれていたストーリーを読んでも、言葉が通じない異国での困難、耳が不自由なためにつうじあえない心…とかそういう部分が書かれていて、とても辛い気持で終わる映画なのではないかと不安に思っていました。(それは、ブラッド・ピッド氏主演の「セブン」のトラウマなのかもしれませんが・・・)

 でも、イニヤリトゥ監督の言葉(パンフレットから引用)

 ”一番よかったのは、人を隔てる壁について撮り始めたのに、人と人とを結びつけるものについての映画に変ったことだ”

 …が、端的にこの映画を表しているように非常に救いのある映画であったことが、とても嬉しかったです。キャスト、シナリオ、映像、音楽… すべてがそれを作り上げていく上でのよい仕事をしていたからこそ、そういう救いをそのままに受け止められるのだと思いました。

 キャストでいえば、ブラッド・ピッド氏の抑えかた、ケイト・ブランシェットさんの表情での語り、菊池凛子さんの力をだしきった挑戦、短いシーンでも味を出す役所広司氏、なんとも存在感がある善良な肝っ玉かあさんのアドリア・バラッザさん、それから見事なバランスで智と情を演じた二階堂智さん、…さらに、モロッコのこどもたちもお父さんも、ガイドさんも、みんな素晴らしい存在感がありました。

 …印象に残ったセリフもいくつかります。

 ”いいえ、私が悪い人間じゃない。愚かなことをしただけ…” 

 が、一番はっとしたセリフでしたが、もうひとつ、オリジナルのシナリオでは、”愛してるよ”だったセリフが、”気をつけて”と、演じる人の意見で変わったというシーンなど、とてもよかったと思います。(未見のかたのために、誰がどうのとの情景は書きませんが、ご覧になられるときに、はっとしていただけるかも…)

 映像と音楽もとてもよくあっていました。東京の高層マンションからみる夜景のシーンをみながら、まさにここが現代のバベルの塔なのだなぁとしみじみと思えましたし、魂にうったえらえるような強いリズムが、心に響く場面もありました。東京、モロッコ、メキシコ…それぞれの場面にあった音楽でもあり、とてもよかったと思います。砂漠のシーンでは、昔見た、”眼には眼を”という映画を思い出し、またあの映画を見たくなりました。

  点滅が多く、気分が悪くなるかもしれないシーンがあるとはきいていましたので、私もそういうシーンではしばし、視線をほかに向けたりしてかわしました。本当は瞬時たりとも眼をそむけたくない映画でしたので、その点、残念なのですが…。

 

 言葉って何だろう…。何のためにあるのだろう…。と、上映中からずっと考えていて、いまだにまだ自分の中では答えがでていません。ただ、「自分をわかってほしくて、語るために、伝えるために、言葉がある」と最初は思っていたのですが、映画を見終わって最初に思ったのは、「言葉は、”確かめるために”あるのかもしれない」ということでした。

 人は一人では生きていけなくて、誰かが自分のことを気にかけてくれていることを確かめたいときに必要なのではないかと。

 だから、言葉がない凛子さんは、必死に言葉以外の方法で、”確かめよう”としていたのではないかと思いました。歯医者さんにも、刑事さんにも・・・。

 私も、”確かめたく”なりました。

 映画館をでて、誰かに電話したくなる映画でした。

 映画館にて鑑賞。

 

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受信: 2007年5月 7日 (月) 01時11分

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