« 【音楽】ハンニバル&二人の絆 | トップページ | 【寓話】ちいさなせかい »

【読書】父からの手紙

 

 久々に、寸暇を惜しんで読んでしまった小説が「父からの手紙」です。

 思春期のころに突然両親が離婚することになり、突然父をなくしてしまった娘と息子。でも、彼らのもとには、毎年誕生日にはその父からの手紙は送られてきていました。時がたち、ある理由から、単に愛情云々ではない結婚を決意した娘は、その婚約者が事件に巻き込まれ、弟がその容疑者にされてしまい、お世話になった父の友人や家族にも困難がおこり、心労で母は倒れてしまいます。

 また、それとはまったく別のところで、殺人事件をおかして9年の刑を終えて出所したばかりの男のストーリーが進み、その男は、自分はなぜその殺人事件をおこしたのか…を探しているうちに、ある真実にたどりつきます。

 まったく別のところで流れていく2つのストーリーが、ある点で結ばれていくおもしろさとともに、きっちりと描かれた人物像で、いっきにひきこまれていきます。

 そして、ふたつの線があるところでまじわって、面になっていきますが、そこに感動と救いがあるおはなしになっています。

 いくつか突っ込みたいところはあります。たとえば、どう考えても模範囚で過ごしたと思われる彼がなぜ9年のフルタイムを刑務所ですごしたのか(これは勝手な想像ですが)。また、ふたつの線が交わる場面が多少強引な展開(ここは究極のネタばれになってしまいますので、ここでは書けません)にも思えること。でも、それらをも補ってなお、よかったと思える小説でした。

 最近、リリー・フランキー氏著の「東京タワー」に象徴されるような”オカン”や、昔ながらの”おふくろ”といった呼称で呼ばれることにふさわしい母親像がドラマなどでも登場してきていますが、この本は、まさに「おとうさん」と懐かしく呼びたい本だと思いました。

 話が進むにつれて明らかにされていく主要登場人部のキャラクターに好感を持て、救いがあることが何よりも気持ちよく胸を熱くできる小説になった理由だと思いました。

 メール時代にはないあたたかさがやはり手紙にはあります。その意味をまたあらためて感じた作品でもありました。

 「父からの手紙」  小杉健治    光文社文庫

|

« 【音楽】ハンニバル&二人の絆 | トップページ | 【寓話】ちいさなせかい »

トラックバック


この記事へのトラックバック一覧です: 【読書】父からの手紙:

« 【音楽】ハンニバル&二人の絆 | トップページ | 【寓話】ちいさなせかい »